概念データモデルの表記法として利用されるのはE-R図です。E-R図は、実世界をエンティティ(Entity:実体)とリレーションシップ(Relationship:関連)でモデル化した図のことで、実務でも広く利用されています。
E-R図は、基本的に、上記したエンティティとリレーションシップという2種類の図記号を使って描かれます。2種類しか図記号がないので簡単そうに思えるかもしれませんが、これがそうではありません。実際、受験者の多くが苦手とする図と言われています。
なお、E-R図は10種類近くあり、種類によって表記ルールが異なります。もともと1976年にP.P.Chenが提唱したものがオリジナルですが、それに追加の概念(汎化・特化関係)が導入された拡張版のE-R図が試験で使われます。試験の中でも午前、午後問題で表記ルールが異なっている場合もありますが、問題文に凡例が記載されているため、表記の違いについてはそこまで気にする必要はありません。
E-R図とは
E-R図は、データベースのエンティティとリレーションシップを図に表したものであり、データベースのテーブル設計に用いられるます。エンティティを「テーブル」、リレーションシップを「テーブル同士の関連」と考えるとわかりやすいです。

エンティティ
エンティティとは、対象事物を概念としてモデル化したものです。と、言っても、よく分からないと思いますが、要するに「見たいこと・知りたいこと」がエンティティです。それは実体があるモノであったり、実体がないモノであったりします。例えば、前者は「商品」や「社員」など、後者は「資格」や「部署」などが挙げられます。
エンティティはいくつか属性を持ちます。属性とはエンティティの特性を示すものであり、エンティティは、属性の集まりであるとも言えます。また、属性が特定の値を持ったものをインスタンスと呼びます。

エンティティと属性は、原則としてデータベース設計者とユーザーが協議しながら決めていきます。その場合、情報の最小単位である属性と、属性のグループであるエンティティに分けて整理します。
例えば、受注管理システムを開発する場合、商品はエンティティになり、商品エンティティの属性は、商品番号、商品名、単価などです。属性は、エンティティを示す四角内に書く場合もありますが、別表にして整理している問題もあります。
エンティティ | 属性 |
---|---|
商品 | 商品番号, 商品名, 単価, … |
受注明細 | 注文番号, 商品番号, 数量, … |
受注 | 注文番号, 注文日, … |
エンティティとエンティティタイプ
試験の午後問題では「エンティティ」の代わりに「エンティティタイプ」という用語が使われます。エンティティタイプとは「タイプ(型)」という語が示唆しているように、エンティティの構造を定義したものです(入れ物と考えればわかりやすいでしょうか)。一方、エンティティは、エンティティタイプの中身、すなわち実際の値(インスタンス)の集合を意味しています。
つまり、厳密に言えば両者の用語の意味は少し違いますが、実用上同じ意味と捉えても支障はありません。
リレーションシップ
リレーションシップとは、業務ルール(業務を遂行する上での運用ルール)によって発生するエンティティ間の結びつきのことです。ふたつのエンティティに含まれるインスタンスの間に何らかの参照関係が存在するとき、両エンティティはリレーションシップで結ばれます。

主キー
エンティティの属性が特定の値を持ったものをインスタンスと言います。エンティティは属性の集まりであると言えますが、インスタンスは属性値(属性の具体的な値)の集まりであるとも言えます。
そのインスタンスを一意に識別できる極少の属性、もしくは属性の組を「主キー」と言います。主キーを示す属性には、上図のように実線の下線を付けるのが一般的です。また、主キーがふたつ以上の属性の組から構成される場合、その主キーを「複合キー」や「連結キー」と言います。
主キーには、以下のふたつの制約があります。
制約名 | 説明 |
---|---|
一意性制約 | 主キー値は、エンティティ内に1つの(もしくは1組)しかないこと(値が重複しないこと)。UNIQUE制約とも言います。 |
非NULL制約 | 主キー値は、NULL値でないこと。 |