データベーススペシャリスト試験は、その名のとおり、情報システムのデータベース設計を担当する人材の能力を評価するための試験です。平成21年度から始まった試験であり、平成20年度まで実施されていたテクニカルエンジニア(データベース)試験の後継試験です。
情報処理技術者試験 全12区分の内のひとつであり、試験制度のスキルレベル4(スキルレベルは1 – 4が設定されている)に相当し、高度情報処理技術者試験に含まれています。
データベースに関する資格といえば、「オラクルマスター」などのベンダー系試験があります。ベンダー系試験の合格率は実務経験が豊富なほど高くなる傾向がありますが、国家試験である「データベーススペシャリスト試験」は、実務でデータベース関連の仕事を担当しているエンジニアでも合格できないことが多いと言われています。
その理由として、通常の業務ではあまり使われない分野(部分関数従属性、スーパータイプやACIDなど)がよく出題されたり、長い問題文を読解する能力を求められたりするからだと言われます。また、OracleやDB2、MySQLといった実装製品に関する知識は出題されないというのも挙げられるでしょう。
では、実務向けではないのかというと、そうではありません。データベースを企画から要件定義、開発、運用、保守するための全ての知識・実践能力を身につけるためには、大きな一歩になるでしょう。(そのようなエンジニアを俗に「スーパーエンジニア」などという言いますが、それを目指す人は取っておいて損はないと私は思います)
国家試験ということで持っていることで、副次的なメリットを享受することもできます。例えば、会社から資格手当てがもらえたり、不動産などのローンを組む際に、審査に有利になったり(審査の申し込み書に国家資格の記入欄があることがある場合があります)、社会的な信用も高くなる傾向があります。
対象者像、業務と役割
IPA 情報処理推進機構ではデータベーススペシャリスト試験の対象者像、業務と役割について下表のように定義しています。
対象者像 | 高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者 |
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業務と役割 | データ資源及びデータベースを企画・要件定義・開発・運用・保守する業務に従事し、次の役割を主導的に果たすとともに、下位者を指導する。 (1)データ管理者として、情報システム全体のデータ資源を管理する。 (2)データベースシステムに対する要求を分析し、効率性・信頼性・安全性を考慮した企画・要件定義・開発・運用・保守を行う。 (3)個別システム開発の企画・要件定義・開発・運用・保守において、データベース関連の技術支援を行う。 |
合格率
平成31年度の合格率は14.4%でした。同年度の応募者数は16,831名だったので、合格者は2400名程度という計算になります。